神 の 子 ど も は み な 踊 る
私たちは、恋人同士なんかじゃない。
だから勿論、愛なんて囁き合ったりしないし、愛を確かめ合ったりもしない。───それでも、身体は安易に結合するものだ。
抜き取られた指に己の性器を始点とした糸が引かれたのを感じながら、男の唇に自分のを宛てがえれば、湿った舌が歯列を確かめてきた。唇から移行してくる唾液は、どんな食べ物とも違う味がする。
それを何故だか酷く感慨深く思いながら、男の脇腹に指先で触れた。脇腹にある縫合跡。セックスをする度に、私は此れに触れたりキスをしたりする。黒崎は其れを眉を寄せて嫌がるけれど、辞める気などさらさらない。此れは一種の(神聖で酔狂な)儀式だ、と私は考えているからで。代わりに、私の乳首やら性器は酷くされてしまうけれど。ほら、今も。
予告も無しに、固い支柱が胎内に一気に入り込んできた。
あまりの乱暴さと圧迫感に視線だけで文句を言えば、熱の篭った声で反論される。「先陣を切ったのは、おまえだろ?」
「おまえが、悪さをするからだ」
それは、私の恒例行事に対して言ってるのかしら? それとも、あんたの過去にまで触れたがったこと?
律動する互いの身体。加速し始める熱と鼓動。臍の淵で交わる体液。舌先で耳朶をなぞられる。私はどうしようもなく、声を上げた。
可能性なら、きっと億単位で存在したのだろう。その中で選出できるのは、たった一項目のみ。なんて残酷なこと。でも、それ以上に尊いことでもある。
私は其の無数の可能性の中から此の男の隣にいることを選んだし、黒崎だって私の腕を振りほどかなかった。
私たちは、運命共同体なのだ。運命を共にしない、運命共同体。
正反対の道を歩き、背中を向け合ったまま、其れでも互いの手を握り締め合っている。
私の胎内で果てた男が首筋で荒い息を吐くのを慰めながら、「ねぇ、此処で一緒に暮らそう?」と、提案してみた。
ねぇ?
きっと、楽しいよ。あんたと、私なら。
息を整えてから、黒崎が私の乳房に顔を埋めた。ペロリと、乳首を舐められる。
「いやだ」
私は泣きそうになって、小さく笑った。
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