何万というファンだといってくれる少女たちの中、女性たちの中から、
僕らはどんな偶然でただ一人の伴侶を選ぶのだろうか。
今から、楽しみと不安が胸に細波のように寄せてくる。


独占感情。


「ユノ兄…今日も出かけるの?」
寝ぼけ眼の僕の眠たい声が廊下に響いた。
玄関のほうを向いて、廊下の僕に背を向ける格好でいたユノは「あ?」と振り返って笑った。
「今帰ってきたところだよ!寝てたんだろ、おこしちゃったの?ごめん」
夜中だろうが朝だろうがお構いなく爽やかな笑顔で(顔に似合わず)ユノが可愛く言うので、
ユチョンもフニャと笑った。
「いいよ、ちょっと起きてきただけなんだ…」
微かに、帰ってきたユノから香る香水のにおいに内心驚いて、口を開きかけて、閉じた。

「ユノ、彼女できたの?」
ユチョンの真後ろでJJのはっきりした声がした。
意味のないところで照れるようなJJ兄は、そのくせ意外なところではっきり、言いたいことをいう。
ユノが玄関に座ったまま、振り向いた格好のまま、ドアの前で立っているJJを見上げる。
ユチョンは長兄二人の間に挟まれるのが好きではない。二人は弟たちの前では頼れる兄貴という役目を完璧にこなすが、長兄二人きりの時、二人での会話には、年下への気負いがまったくなくなり、容赦ないが底にある深い親愛に気後れするためだ。
「違うよ!これは友人の…彼女なんてつくっても、会う暇さえないだろう?」
「まあ、こんなに両国を行ったり来たりじゃ、待つ彼女がかわいそうだね」
ユノの返事にあっさりと引き下がってJJが笑った。はじめから疑ってなんていなかったらしい。
ユチョンは少しばかり疑っていたが、思えばユノはきっと、彼女なんてできたら、隠し事なんてできずもっと前にメンバーの皆が気づいてしまっただろう。
「…「彼女」という存在を、僕らはいつ作れるだろうね」
JJが冗談半分に言った。
「こんな仕事をしている限り、会う時間もつくる余裕もまともにもてない。それに、幾人というファンが僕らの周りにいるのに、ただ一人の女性に運命を感じて見つけ出すことができるだろうか?」
「ロマンチックなことを言うね、JJ兄」
ちゃかしたユチョンだが、それはきっとメンバーがそれぞれ思っている。いくらでも遊んでくれる女性を見つけることならば簡単だろう。しかし、人生の伴侶を見つけることは途方もない様に思えた。
隣のユチョンと目の前のJJに目をやってから、ピントはずれのことをユノが言う。
「結婚はしたいけど。…メンバーと離れて暮らすのは寂しいな…」
その言い方が本当に寂しそうだったので、ユチョンはなぜかそこで笑ってしまった。
言葉だけきけば切ないのに笑ったのは、メンバー思いのリーダーらしかったのと、寂しいとそう素直に言ってくれたことが嬉しかったからだ。
「僕もだよ、ユノ兄」
同意のユチョンの言葉のあとに、微笑んでいたJJが真顔になって幾分現実的なことを呟いた。
「…結婚はしたいけど。…彼女を作ったときの、ファンの反応がこわいね」
「嫉妬?」
「やっぱり、なくはないよ。僕だって、嫉妬されたことがある。」
言葉を最後まで聞いたが、一瞬理解できずに、一テンポおいてからユノとユチョンが顔を同時に上げた。
「え、女の子に?」
「たぶん、ファンには三種類いる。誰と仲良しでもいいと思うタイプ。男同士ならいいと思うタイプ。女でも男でもいやなタイプ。」
JJは三本指を折りながら言った。
「「Wrong Number」が現実になってしまう可能性もある」
ユノは観点を変えてもうひとつの可能性を指摘した。
「…」
顔を見合わせて三人は見つめあった。JJがそんな自分たちに呆れたように仰向いて、
「でもこれ、杞憂じゃない?ユノに彼女もいないし。」
「まあ、誰かに熱愛報道ができてからの心配だね」
JJは寝るといって廊下を戻っていく。ユチョンも戻ろうと立ち上がった。しかし、ユノが玄関に座ったままだ。
「…ユノ兄、寝ようよ?」
「うん、…シャワー浴びてからいくよ」
なにか考え事して上の空のようなユノに、ユチョンはすこし心配になったが、JJの後を追った。



「JJ兄。…いつ嫉妬されたことがあるの?」
フ、と、苦笑するJJは、どんな笑い方でも美人だと思う。
「前、ユノと近距離でしゃべってたら、あとから女性スタッフか、ただ居合わせただけの女性かに、「…ずるい」っていわれた。…まあ、多分そういう意味だと思うんだけどね。」
「ユンジェカップルを応援してくれる人ばかりじゃないってこと。」
「僕らには普通の距離だけど。…誤解されることの多さに、たまに驚く。」
「ユスにはそういうのは、ないな」
ユチョンがいう。

それをきいて、JJがなんてことなく、こう口にした。
「ユスは、子供だから」
ひとつしかかわらない、とユチョンは言いかけたが、年齢ではなく、雰囲気が誤解されるのだ、きっと。
ユスより、ユンジェのほうが雰囲気が大人っぽく、「少年」より「男性」に近い。
ユノが男顔に対して、JJが女顔だから、よけいに嫉妬に近い感情も生まれるのだろう。
ユノ兄は誰にでも優しいけれど、JJ兄とは、話す距離よりも心の距離がもっとも近いことがわかるから、「ずるい」とつい呟かせるのだろう。
「気をつけないと、ずっと誤解されたままだね」
言ったら、JJが面白そうにちょっと挑戦的に笑った。
「いいけどね、僕は。面白いし。」

「嫉妬されたってかまわないよ。だって僕の隣にいるときのユノは、僕のものだからね。」
いたずらっぽく言い放って、JJ兄は廊下を歩いていってしまった。
好奇心旺盛でどんな状況にもたちまち順応してしまいそうな彼は、
そんな状況も楽しみに変えてしまえるのだろうか。

「…JJ兄がそばにいる間は、ユノ兄は大丈夫…?」
玄関に座っていた後姿の広い背中を思い出して、ユチョンは小さく心で呟く。
がんばりすぎるリーダー、同い年であの好奇心旺盛な心強い親友がともにいてくれる間は、
リーダーが頑張りすぎて壊れることはないだろうか?
「でもユノ兄、僕らにだって、たまには色々頼ってくれていいんだ…」
年下とか気にしなくていい。話してほしいよ、一緒に遊びたいよ。
メンバー外の友人たちや、JJ兄に、僕だって少し嫉妬している。

ユチョンは先ほどの出かけるかと思ったユノ兄の背中の服を引っ張って、ひきとめようかと思っていた。
暇があれば出かけてしまう。JJ兄とばかり今後の話をする。

頼ってよ。僕だって一緒にいたい。

がんばりすぎないで、リーダー。愛しているから。


                    end.

あとがき。
2Uでユンジェな三人。チョンジェとユンジェ、ではないところがユノ贔屓だと自分でも思う。
精神的には、JJの方が男前っていうか、攻め気質だと思う。…なぜか。
2Uは、お互い想いあいすぎる感じが好き。

2style.net