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第365.5話“イイ女は、密なる場所に隠すもの” ロビンを追って発進した海列車の中で、わたしが蜜なる場所に電伝虫を隠してることなど、誰が想像できただろう。 ちょっとした、いたずら気分だったけど、本当はすごくドキドキしてた。たぶん、わたし自身にもそういう好奇心があったせいだ。 いつ、サンジ君から連絡が入ってくるかずっと気になっていた。そして、それは突然やってきた。 ぷるぷるぷるぷる 「あん・・・!」 予想以上の振動だった。思わず声が出てしまう。 「どうしたナミ」 ゾロがそう言って私を見た。 やばい。気づかれる。 「なんでもない」と言いたかった。でも、電伝虫の振動は更に強まり、今声を出してもきっと言葉にならない。 慌てて首を横に振るが、それがかえってよくなかったらしく、今度はチョッパーまで私を見つめてきた。 「大丈夫か?ナミ。なんか変だぞ」 背中にぽたりと氷を落とされたような感覚がした。振動に呼応するかのように、脚が震える。なんとか力を込めて、声を絞り出した。 「大丈夫だから・・・うあっ・・・気に・・・しないで・・・」 言葉を発した後で後悔しても、もう遅い。案の定、列車内全員の視線がわたしに向けられたので、余計に身体が熱くなった。こうなったらもう、振動がおさまるのを待って我慢するしかない。 ぷるぷるぷるぷるぷる わたしの中で暴れる電伝虫に、容赦などなかった。サンジ君、いつまでかける気なの?後で絶対許さないんだから。・・・お願いだから、もう止めて! このままじゃダメ。なんとか気を紛らわそうと思ってうつむき、向いの席にお酒をかかえて座っているゾロの足元に目をやった。そのお酒の匂いが部屋中に充満していることに気づく。 知らないうちに、鼓動も早くなって呼吸も荒くなっていたわたしは、お酒の匂いをたっぷりと吸い込んでいた。10杯お酒を飲んでも酔わない自身があるのに、匂いだけで酔うなんてはじめてのことだ。意識が朦朧として、目がうつろになる。なんだか目の前が、煙に包まれたようにぼんやり白っぽく見えた。 あは・・っん・・・ もはや心の中の声か、実際に発してしまった声なのか判断できない。それでも両手を脚に挟んで力を込めて、なんとか震えを抑えようとしながら、私はロビンのことを考えていた。 「電伝虫があれば、もっと気持ちいい事してあげられるんだけど」 ロビンが以前、ベッドの中でわたしの身体を弄りながら言った言葉。その時わたしは、「いやよ電伝虫なんて!気持ちわるい」とすぐに断った。でもねロビン、本当は少しだけ興味があったの。 今度一緒に寝るときは「やっぱり電伝虫使いたい」って言おうと思ってたんだ。 だけどロビンは勝手にわたしから離れて、遠くに行こうとしてる。ずるいわよ、そんなの。だからわたしは、先にこっそり一人で電伝虫を使ってみたの。 あうっ・・んはぁ・・・はぁ・・・ 電伝虫はまだぶるぶると振動を続けていた。 もうだめ。さすがのわたしもこれ以上は限界を感じていた。周りで男達がざわめいているけど、皆と顔を合わせることなんてできない。「もうやめて!」そう叫びたかった。叫べるものなら。 ロビン姉さま、ごめんなさい!ナミが、ナミが間違ってました。やっぱり姉さまに内緒でこんな事、するべきじゃなかった。もうみんなに気づかれたんじゃないかって思えば思うほど、身体熱くなって、どうしていいか分からなくて、怖い。 ナミは悪い子。ナミは本当に悪い子。許して、姉さま。何でも言うこときくから、お願い! その時、恐れていた事が起きてしまった。勝手なことをしてしまったわたしを、ロビンは許してくれなかったのだ。 「あっ・・・んうっ・・ああっ!!!」 不覚にも、男達の前でわたしは絶頂を迎え、風船が割れたように一気に力が抜けていった。ちょうど、電伝虫も止まったが、わたしはまだ快感の余韻を感じていた。あそこがじんじんする。 ようやく平静をとりもどし、2、3回深呼吸して、覚悟を決めて顔をあげると皆が慌てている様子が目に飛び込んできた。そりゃ、バレるわよね。もう終わった、と思った。 「ナミ!早く窓を空けるんだ!」 チョッパーがそう叫んだが、一瞬何を言っているのか分からなかった。状況が少し理解できない。やっぱり電伝虫のことがバレたんだろうか。 「え?え!?ま、窓って・・・どっちの!?」 わたしはもう一度うつむいて、スカートがめくれていないか確認する。今思えば、この時のわたしの発言はどうかしてた。あろうことか、チョッパーはわたしに、下着を脱いで電伝虫を見せてみろ、と言っているように聞こえたのだ。 「どっちって、後ろの窓しかないだろ!」 チョッパーはわたしの後ろの窓を指さして言った。ようやくここで、状況が少しづつ理解できはじめた。 「わかった!」 そう言ってわたしは窓を空けて煙を外に出すと、彼の救出を一緒に手伝った。 ここからは後から聞いた話だけど、隣の石炭車両にはなぜかパウリーが忍び込んでて、タバコを吸っていたらしい。 そんなことをしたら一酸化中毒になるだなんて、今時小学生でも知ってるはずなのに、パウリーはそれを知らなかった。ふん、人のことを散々ハレンチ娘だなんて呼んだ罰よ。って、こんな時にあんなことをしてたわたしが言えることじゃないけど。 そして、充満した煙はわたし達の車両にまで侵入してきて、それに気づいてパウリーを発見したチョッパーやルフィは、それこそ大騒ぎだったみたい。 それがちょうど、わたしが絶頂をむかえた時だったから、結果的にわたしの秘密はみんなにバレずに済んだ。そんなことも耳に入らないくらい興奮してたのかな、と思うとちょっと自分が怖くなった。 安心したのもつかの間。パウリーを助けた後、ゾロが細い目を更に細めて小声で、 「さっきお前に電伝虫鳴らしたんだが、どうして出なかったんだ?それから、そっちの窓じゃねェだろ?」 と言ってきた。酒瓶の裏に持っていた電伝虫をチラリと見せる。 ロビンを追って発進した海列車の中で、わたしが蜜なる場所に電伝虫を隠してることをゾロに見抜かれていたことなど、誰が想像できただろう。 とりあえずわたしは、ロビン姉さまー!と頭の中でひとしきり叫んでから、ナミは悪い子、ナミは悪い子、を続けるしかなかった。 <おわり> |