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ルネサンス後期にバードやダウランドなど優秀な音楽家を輩出したイギリスは、17世紀前半には厳格なピューリタン革命によって音楽的には低迷期に入ってしまいます。1660年の王政復古以後、イタリアやフランスの音楽を積極的に取り入れた結果、17世紀も後半になって、ようやくバロック音楽の開花を見ることになりました。
わずか36歳で夭折したヘンリー・パーセルは、王政復古期のイギリス最大の作曲家でした。彼は、教会音楽や鍵盤楽器用独奏曲、器楽合奏曲、劇音楽など様々な分野で多くの作品を残しましたが、中でも英語による声楽曲は彼の本領が発揮された分野だと言われています。
《ディドーとイーニアス》はパーセルが残した唯一のオペラであると同時に、バロック・オペラの中でも完成度の高い、最上の作品のひとつです。古代ローマの詩人ヴェルギリウスの叙事詩「アイネイアス」に基づく、カルタゴの女王ディドーとトロイアの王子イーニアスの悲恋物語が、ひときわ美しく、印象深くつづられていきます。
中でも、劇の大詰めで瀕死のディドーが歌う嘆きのアリア『私が土の中に横たえられる時』は有名で、通奏低音の太い骨格の上に、悲哀に満ちた優雅で気品のある旋律をまとわせ、女王ディドーの悲しみを心にしみいるように表現しています。
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