ベースボール・ドリーマーズ

 浮草堂注:おそらく、PEACE GAMEに商業野球チームは存在していないと思います。
 サクラナの森からの道中、世間話の一つとして出た台詞。
「お前ら、好きな野球チームってあるか?」
 ハリィの何気ない質問である。
 だが、セスティセリオの顔つきが変わった。
「それ!今答えないと駄目かい!?」
 ハリィの(認めたくないことだが)小さい肩をがっしと掴む。
「い、いや、そりゃ・・今じゃないと、お前忘れるだろうな」
「そうかい・・五分でいい!五分でいいから時間をくれないか!?」
 めったに見えない必死の顔につい、おう、と答えてしまう。
「じゃ、五分で戻るから!」
 駆け出して森の影に消えたセスティセリオを、一同は呆然と見送った。
「・・・・・いったい何なんだ?」
「まあ、五分で戻るそうですし」
「そうだ!お前らは好きな野球チームって何なんだ!?」
 トールが大声で話題を引き伸ばした。
「俺は」
「オリックスバッファローズでしょ」
「何故分かるエルフ!」
「オーラで」
   そう、神戸のセレブにして上品な雰囲気を保ち、イチローという逸材を生み出し、更に震災が 起きた年、「がんばろう神戸」を合言葉に涙の優勝を果たしたオリックスブルーウェーブ。
 ここから漂ってくる、香水とパンと汗と爽やかな声援を、生中とうどん定食と汗と「やったーや ったーまたやったー阪急電車ではよ帰れ!」という声援で見事に染め上げたバッファローズ。
「そうか、オーラが漂っているのか」
 トールは嬉しそうなので良しとしよう。ちなみに筆者は別にバッファローズは嫌いではない。
「ぼうずはどうだ?」
「ぼうずじゃねえ!」
 とっさに殴りかかろうとするのを、ひょいと片手で止める。
「阪神タイガースってトコじゃないですか?」
「あ、ぽいね」
 スレイクスがタルスに同意する。
「金本って人が居たら密かにアニキって呼んでたりとか」
「あーしてそう」
「するかああッディグウェート、リグヴェート、暁の双頭の・・・」
 とっさに二人がかりで押さえつける。
「阪神ファンに失礼だろうが!」
「っていうか何で阪神そんな嫌なの!?駄目虎じゃないよ、もう!」
 ようやくハリィが納まる。
「では、何処のファンなんですか?」
 タルスがにこにこと問う。今気付いたが、まったく押さえるのに参加していない。
「・・・・広島カープ」
「あー、あのさ、阪神は巨人をライバルだと思ってるよ」
「うるせー偽エルフ!誰もライバル視してるなんて言ってねえよ!大体お前は何処のファンなん だよ!」
「俺は」
 得意げに胸をはる。
「日本ハムファイターズ」
「オタクの上ミーハーなのかよ!」
「新庄ならもう引退したよ!」
 人差し指を口に当てるポーズで、タルスが
「そこで新庄が出てくる辺り、最初はミーハーだったんですよね」
と呟く。
「うるさいよ!大体お前は何処のファンだよ!?」
 タルスは爽やかに笑った。
「西武ライオンズです」
「・・・・ブラックジョークだな」
「時事ネタはやめろよ・・浮草堂」
 トールが相変わらずの大声で「ブラックとか言うな!西部の選手はとても頑張っているんだ ぜ!それとは別の話として時事ネタはやめろ!」と叫ぶ(本人的には喋っている)。
「いえ、正直選手はどうでもいいんですよ」
 やっぱりブラック方面か。
「マスコットがレオ君ですから」
 ブラックくなかった!
「手塚先生のファンなんですよね」
「そ・・そうか・・」
 二人を眺めて、トールが何を疲れた顔をしてるんだ?とタルスに聞いている。
「ティンカーを忘れるななのぅ!楽天ゴールデンイーグルスファンなのぅ!」
「あ・・あのチームのマークな・・某漫画を読んでから「毛」という字にしか見えない・・」
「侮辱するななのぅ!」
 ハリィにつっかかるティンカーを眺めながら、またスレイクスが口を開いた。
「ま、話の最初に戻るけど、セスティセリオは何処のチームのファンなんだろうね?何か走って ったけど」
「人に言うのに勇気が居るチームなんじゃないですか?」
 一同、考え込む。
「んなチームあるか?」
「スポーツチームに恥ずかしいも何もねえ」
 あ、とようやく思いついたようにタルスが言った。
「実在してないチームなんじゃないですか?」
「どういう?」
「例えば・・・野球漫画のチームとか」
「あ、成程。そりゃ勇気いるな」
 一同、納得。
「しかしお前がそれ言うのもなー」
「あ、五分経ちましたよ」
 聞いて無い振りをするタルス。
 がさがさと草を掻き分け、セスティセリオが帰って来た。
「お待たせしてすまない」
 笑顔で辞書を手に。
「おい、で、結局何処のチームのファンなんだ?」
「答える前に質問するけれど、野球とはベースボールで間違い無いね?」
「そう言う事だったんだ」
「そう言う事だったんですか」
 全てを理解した、タルスとスレイクス。
 全く理解できない、ハリィとトール。
 スレイクスがあっさり見抜いた事実を告げる。
「野球って単語が何だったのか忘れたんでしょ」
「・・・・!」
 はあ、とセスティセリオがため息を吐いた。
「随分簡単な単語だったような気がしたから、こっそり調べたのに」
「ややこしい真似してんじゃねー!おかげでこっちは道頓堀に飛び込む連中と同種と思われた んじゃ!」
 ハリィが憤慨するが、阪神ファンが全員道頓堀に飛び込むわけではない。
「で、何処のファン?」
 セスティセリオが秀麗な顔を綻ばせた。
「レアルマドリードだね」
 さあ皆さん、語尾は各人物を想像して付けてください。
「それはサッカー!!」

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やばい、やばいよ浮草堂さん!面白すぎだよ!
というわけでまた頂いてしまいましたvv誰か鼻血を止めるティッシュを下さい。

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