「こ・・・これはっ!!」
桃城が拾い上げたそれを見て、不二とリョーマは同時に叫んだ。 それは、写真だった。見なれた青学テニスコートの水道の前に、大石と(もっとも、大石は半分くらい切れていたが)、手塚が写っている。 手塚はどうやら練習が終わって、顔を洗った直後らしく、大石がタオルを差し出している。それを受け取ろうとしている手塚は、不二やリョーマですらめったに見られない、眼鏡をかけてない素顔だった。
「・・・!!」 「ちょちょ、ちょっと何スかこの写真!」 「んふふふふ!いかがですか、聖ルドルフ写真部の腕前は?綺麗に撮れてるでしょう」 「・・・なんで、君がこんなもの持ってるの・・・?」 「なんでって、偵察の一環としてですよ。他に何があるって言うんです」 「偵察って・・・これ、試合に関係あるの?」 「んん、特に無いですね。ただ手塚君は殆ど試合に出ませんから、 せめて何かの参考になればと思って、手当りしだい撮らせただけのことです」 「てて、手当りしだいっっ!?てことは、ま、まだ他にも写真・・・」 「越前君、ちょっと落ち着いて。どもってるよ」 「そういう不二先輩だって、手が震えてるじゃないっスか!」 「・・・ええ、まだありますよ。少し御覧になりますか?」
そう言って、観月は余裕たっぷりにファイルのページを開いて(付箋が付いていたところを見ると、こうなることは予想していたらしいが、興奮している二人は気付かなかった)、そこに貼ってある写真を二人の前にかざしてみせた。
「う、うあっ!ぶ、部長・・・!」 「ああ・・・手塚・・・」
(一体、何が写ってるんだ・・・?) うっとりと写真に見入っている不二とリョーマを見て、桃城と裕太は顔を見合わせたが、二人の位置からだと写真は光ってしまって、見えなかった。
「それでですね、さっきも言った通りこれらの写真、もう大した意味もありません。 ですから、処分しようと思ってるんですよ」 「!!!」 「でもせっかくですし、不二君達にお譲りしてはどうかと思ったんです。 もちろん、ただ差し上げるのもなんですから、練習試合のお礼に、とね・・・」 「観月・・・君ってやつは・・・」 「んふふふ・・・僕のデータ収集は、やっぱり完璧でしょう? どうです、不二君?試合の申し込み・・・受けていただけますよね?」 「・・・ひょっとして、君・・・わざと、今日来たんじゃないの? 手塚と大石が抽選会でいないのを知ってて・・・」 「さあ、どうでしょうね。それでどうなんです不二君。やりますか?」 「・・・わかった、受けてたつよ」 「不二先輩!ずるいっスよ、自分だけ!俺もやる!」 「んんー、そんなに慌てなくても大丈夫ですよ、越前君。なんのためにわざわざ裕太君を連れて来たと思ってるんです」 「へ?み、観月さん・・・それってもしかして・・・」 「ええ、そうです。僕は公明正大な人間ですから、越前君にも、ちゃんと機会を 差し上げますよ。・・・ただし」 「ただし?」
(何がどう公明正大なんだ・・・) ニヤリと笑った観月を見て、リョーマは何故か嫌な予感がした。
「試合は、ダブルスでやりましょう」 「!!」 「ダブルス・・・越前君と・・・?」 「・・・なんスか、不二先輩、その嫌そうな顔」 「ふふふふ、もちろん僕だってシングルスで都大会の雪辱戦といきたいところですが、 青学のみなさんは『関東大会』の練習で『お忙しい』ようですし、あまり時間をとらせては 悪いですからね」 「・・・っ」
(く、なかなかやるな・・・観月!) 桃城は、何故かひとりで納得しながら、事の次第を見つめている。
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