−お前のメガネ俺にくれ。 変な猿が現れた。 何を言っている? メガネもなにも、僕はそんなもの掛けてはいないだろう。 −お前のメガネ俺にくれ。 また繰り返した。 一体なんなんだ? −メガネ俺にくれないのか? そんなもの掛けてはいないと言っている。 もしあったとしても必要ないさ。 取っていきたければ勝手に持っていけ。 −けけけけ。 ぴょんぴょんと飛び跳ねて僕に体当たりした。 −もらっていくぞやはははは。 その手には確かにメガネがあった。 それは七色で鮮やかに光っていた。 猿はぴょんぴょんぴょんぴょんどっかに消えていった。 怖かった気持ちがすっと晴れた。 そんな気がした。 他人が怖くて怖くて仕方がなかったはずなのに。 もうそんな気持ちひとかけらすらもない。 それで思ったんだ。 きっと僕が怖かったのは他人じゃなくて、他人が持っている“イロモノ”たち。 地位や名誉や高級な物達。 きっとあの猿が持っていったのは僕のイロモノメガネだったんだ。 −けけけけ。お前のメガネも俺にくれ。