鏡の中にいる自分に、一言。 「あなただれ?」 それは確かに、自分のはず。 そんなことは分かっています。 でも、なのに何故あなたは私じゃないの? おんなじ目をしています。おんなじ鼻をしています。歯並びだって、もちろんおんなじです。 なにが違うの?と、言われると、口篭もってしまいます。 それでも、あなたは私ではありません。 鏡に手を伸ばしてみます。 鏡の中からあなたは、私とおんなじように手を伸ばします。 両の手が触れました。 あなたの手は冷たいのね。 驚くほど冷たいその手は、確かに私のものではありません。 私の手は、暖かいです。 それは、私が生きモノである証です。 私の体を駆け巡る血は、大昔の、私のおじいちゃんのおじいちゃんのそのまたおじいちゃんの、もっともっと前のおじいちゃんの体に流れていた血です。 いっぱいの人達が生きてきた証です。 あなたにはそれが無いのね。だからあなたは私じゃないのね。 だって、あなたは生きモノではないんですもの。 だって、私は生きモノなんですもの。 暖かいこの手が、私の生きているって証なんですもの。